東京地方裁判所 昭和43年(ワ)4804号 判決
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔判決理由〕土地の賃料は、その実質的な使用収益をある一定期間地主から借地人に貸与することによつて借地人が取得する権利の対価というべく、その相当額の算出にあたつては当該土地の価格を地主が投下した資本額を考え、これに一定の利潤率を乗じ、これに当該土地に対する公租公課等を加えたものをもつて原則的な賃料とし、これに契約当事者の特殊事情、従前の賃貸借の条件等を勘案して右額を合理的に修正して算定すべきものと考える。ところで、基本となる土地価格は、市場価格をそのまま用いるのは妥当でなく、当該借地契約に基づいて利用している借地の現況に応じて修正した価格とすべきである。蓋し、土地の市場価格が高層堅固な建物敷地としての高い価格の土地になつたので、それに見合つた地代の増額請求をしても、契約で二階建の木造建物敷地として利用する外ない借地人にこれを負担さすことは、当を得ないからである。右のように修正した土地価格から借地権価格を控除した底地価格を地主側に留保された土地価格、すなわち賃料算出の基礎となる投下資本とみなすべきである。そこで右借地権価格をどのようにして算出するかであるが、一般に借地権価格と底地価格との比率を七対三というような比率に一定してその比率から右価格を求めるのが通常であるが、借地権価格はこれを経済的にみれば既定の借地権を第三者が譲り受けると仮定して、当該土地を新規に借地して権利金なしで支払いをする借地料よりも現に支払っている契約借地料が低額であれば、その代価として支払うものと認められるから、その差額借地料を残存期間中年金的に収容するものとして福利年金現価係数を適用して算出すべきものと考える。なお、利潤率は、商事法定利率と同率の年六分とするのが相当である。公租公課等は、具体的な数額を加算するのが通常であるが、これを含めた利潤率として年六分五厘を税込み期待利廻りとして算出することも許されるであろう。
以上の考察に基づいて本件土地の適正賃料について判断すると、成立に争いのない甲第一号証によれば、本件土地の昭和四二年六月一九日当時の一平方米当り単価は六万円、3.3平方米当り一九万八、〇〇〇円であることが認められ、これに必要な時点修正、同類型の近傍土地の価格等を参照して増額請求時の地域的な価格を3.3平方米当り二五万円と評価し、これを基礎として本件土地の昭和四三年三月二六日現在の適正賃料を3.3平方米当り約一二〇日とする鑑定人宮下正一郎の鑑定結果は、おおむね前記考察に沿うもので合理性があると認められるので、適正賃料としてこれを採用することとする。すなわち、宮下鑑定によれば、本件土地の地域的な価格3.3平方米当り二五万円は、右地価からすれば建築物を高層化して本件土地で許される制限一ぱいの二〇米の五階建が可能であるが、本件においては契約により二階建木造建物敷地としてしか利用できないから、最有効使用に対する減価率を四〇パーセントとし、元本としての土地価格を3.3平方米当り一〇万円とする。これに税込期待利廻り年六分五厘を乗じ新規に借地契約する場合の仮定借地料六五〇〇円を出し、これより本件契約借地料3.3平方米当り一年五二八円(一か月四四円)を差引いた差額借地料に年六分、期間二五年(本件借地期間は更新により二〇年となるが、建物の耐用年数を考慮して二五年としたもの)の複利年金現価係数12.783を乗じた7万6340円を借地権、従つて二万三、六六〇円を貸地資本としての底地価格とする。そして右底地価格に税込期待利廻り年六分五厘を乗じた一四九五円を、3.3平方米当りの年額賃料、これに附近の地代事例を参照して3.3平方米当り月額一二〇円とするものである。
(早井博昭)